患者に寄り添い幅広い業務を行う看護師は、チーム医療の中心的な役割を担っています。また、タスク・シフト/シェアの動きの中で、優れた判断力や知識・技術を持つ看護師の活躍に患者や医療スタッフの期待が寄せられています。今回は、看護業務や看護師の育成に臨床意思決定支援リソースUpToDate®を活用されている、名古屋医療センターの副看護師長・診療看護師 (Nurse Practitioner:NP) 立松美穂さんにお話しを伺いました。
日々の看護業務で得た疑問を解決したい
多職種連携・チーム医療の推進に看護師の存在は欠かせません。名古屋医療センターの特徴と、看護師教育体制や支援制度について教えてください。
当院には緩和ケアチーム、DST(認知症ケアチーム)、NST(栄養サポートチーム)などのチームがあり、多職種連携、ガンリハカンファレンス、倫理カンファレンスなどを通じたチーム医療を推進しています。
国立病院機構には看護師のキャリア形成支援向けの「看護職員能力開発プログラム(ACTナース)」と、看護管理者育成支援のための「看護管理者能力開発プログラム(CREATE)」が整備されており、当院でもこれらのプログラムを活用した看護師教育システムがあります。NP導入に対しても、病院が一丸となった形での支援をいただいています。進学のための病棟異動も考慮されます。たとえばクリティカル領域への進学を希望する場合、救命救急センターやERなどへの異動が可能です。研究休職制度を利用した大学院進学や、一部の大学院へは推薦制度を利用した受験も可能となっています。
NPの重要性が日本で議論され始めたのは2000年代に入ってからでした。立松さんがNPを目指した理由を教えてください
私は、新卒で名古屋医療センターに入職し、現在23年目です。呼吸器内科病棟、呼吸器外科病棟、救命救急センター、脳神経外科病棟などで勤務し、途中、大学院へ進学してNPの資格を取得し、現在は消化器内科に勤務しています。
看護師として勤務する中で、医師の指示に疑問を感じることはありました。なぜこの患者さんにこの薬剤を使用するのか、なぜ今日から指示が変わったのか、同じ疾患でも医師によって薬剤の種類や用法用量が違う理由は何かなど、看護師の視点からは分かりにくいことが多々あります。これはある程度経験を積んだ看護師であれば誰でも感じることかもしれません。
また、医師による投与指示などにはガイドライン等のエビデンスがありますし、医師それぞれの考え方もあると思います。一方で、看護師は異動もありますから、皆が同じ目線、同じ知識レベルで物事を考えているわけではありません。私は看護師としての知識レベルを向上し、医師と同じ目線で物事を考えることの必要性を感じ、NPを目指しました。
NPになってから周囲の対応に変化はありましたか?
医師とのディスカッションの中で、対応の違いを感じることがよくあります。たとえばある患者さんへの抗菌薬投与の指示に対し、理由や投与方法の違いについて医師へ質問すると、看護師には詳細まで教えていただけないことが多い一方で、NPからの問いかけには「このような理由でこの抗菌薬が適していると判断したから」という薬剤選択の理由まで説明して下さいます。NPは疾患や治療法に対する知識量が違うため、医師からの信頼も高くなっていると考えています。