ヘルス27 12月, 2023

「医師と同じ目線を看護に取り入れたい」 名古屋医療センター、看護師の知識向上と育成に UpToDateを活用

患者に寄り添い幅広い業務を行う看護師は、チーム医療の中心的な役割を担っています。また、タスク・シフト/シェアの動きの中で、優れた判断力や知識・技術を持つ看護師の活躍に患者や医療スタッフの期待が寄せられています。今回は、看護業務や看護師の育成に臨床意思決定支援リソースUpToDate®を活用されている、名古屋医療センターの副看護師長・診療看護師 (Nurse Practitioner:NP) 立松美穂さんにお話しを伺いました。

日々の看護業務で得た疑問を解決したい

多職種連携・チーム医療の推進に看護師の存在は欠かせません。名古屋医療センターの特徴と、看護師教育体制や支援制度について教えてください。

当院には緩和ケアチーム、DST(認知症ケアチーム)、NST(栄養サポートチーム)などのチームがあり、多職種連携、ガンリハカンファレンス、倫理カンファレンスなどを通じたチーム医療を推進しています。

国立病院機構には看護師のキャリア形成支援向けの「看護職員能力開発プログラム(ACTナース)」と、看護管理者育成支援のための「看護管理者能力開発プログラム(CREATE)」が整備されており、当院でもこれらのプログラムを活用した看護師教育システムがあります。NP導入に対しても、病院が一丸となった形での支援をいただいています。進学のための病棟異動も考慮されます。たとえばクリティカル領域への進学を希望する場合、救命救急センターやERなどへの異動が可能です。研究休職制度を利用した大学院進学や、一部の大学院へは推薦制度を利用した受験も可能となっています。

NPの重要性が日本で議論され始めたのは2000年代に入ってからでした。立松さんがNPを目指した理由を教えてください

私は、新卒で名古屋医療センターに入職し、現在23年目です。呼吸器内科病棟、呼吸器外科病棟、救命救急センター、脳神経外科病棟などで勤務し、途中、大学院へ進学してNPの資格を取得し、現在は消化器内科に勤務しています。

看護師として勤務する中で、医師の指示に疑問を感じることはありました。なぜこの患者さんにこの薬剤を使用するのか、なぜ今日から指示が変わったのか、同じ疾患でも医師によって薬剤の種類や用法用量が違う理由は何かなど、看護師の視点からは分かりにくいことが多々あります。これはある程度経験を積んだ看護師であれば誰でも感じることかもしれません。

また、医師による投与指示などにはガイドライン等のエビデンスがありますし、医師それぞれの考え方もあると思います。一方で、看護師は異動もありますから、皆が同じ目線、同じ知識レベルで物事を考えているわけではありません。私は看護師としての知識レベルを向上し、医師と同じ目線で物事を考えることの必要性を感じ、NPを目指しました。

NPになってから周囲の対応に変化はありましたか?

医師とのディスカッションの中で、対応の違いを感じることがよくあります。たとえばある患者さんへの抗菌薬投与の指示に対し、理由や投与方法の違いについて医師へ質問すると、看護師には詳細まで教えていただけないことが多い一方で、NPからの問いかけには「このような理由でこの抗菌薬が適していると判断したから」という薬剤選択の理由まで説明して下さいます。NPは疾患や治療法に対する知識量が違うため、医師からの信頼も高くなっていると考えています。

Miho Tatematsu, Deputy Chief Nurse and Clinical Nurse, Nagoya Medical Center, National Hospital OrganizationNPは医師と同じ目線で物事を捉え、患者さんに対する治療方針や薬剤の選択基準、用法用量や投与期間などを把握しておく必要があります。常に新しい情報やエビデンスに則った情報を蓄積していく必要があり、自分の知識をどのようにアップデートしていくかを常に考え、最善の方法を模索しています。
独立行政法人 国立病院機構 名古屋医療センター  副看護師長・診療看護師 立松美穂

UpToDateは医師と同じ目線で考えていくために必要な情報源

立松さんがUpToDateを利用されるようになったきっかけは何ですか?

当院では、2012年12月から病院全体へUpToDateが導入されており、2013年にNP取得のために大学院に通っていた時も「UpToDateというツールがある」ということは知っていました。

私自身が実際にUpToDateを利用するようになったのは2018年頃、NP取得後に当院で勤務する中での総合内科医とのディスカッションでした。ある患者さんへの治療方針等に疑問が生じ、当時当院に在籍されていた担当医の安藤諭医師 に質問した時、「医師と同じ目線でガイドラインやエビデンスに基づく考え方をするならば、UpToDateで調べる習慣をつけると良い」と助言をいただき、実際にUpToDateの画面を見ながら説明していただきました。UpToDateの情報量の多さや正確さ、エビデンスとしての利用価値を知り、自分でも利用するようになりました。

UpToDateを利用するようになって、情報入手の方法は変わりましたか?

治療方針等に疑問が生じた時、以前は一般的な検索サイトで調べて医師へ質問していました。しかし、当院では看護師でもUpToDateが利用できると知ってからは、エビデンスに基づく情報を知りたい時にUpToDateを利用しています。 やはり信頼できる情報量が違いますし、医師と同じ目線で物事を考えるためには、医師が利用している情報源を自分も利用することが必要と考えたからです。

どのような場合にUpToDateを利用されていますか? 

診療科によって変わるガイドラインを比較する、あるいは医師からの指示に対する疑問点を調べるといった場合にUpToDateで情報検索しています。

現在勤務する消化器内科では、抗菌薬投与に関する疑問が多いのではないでしょうか。病棟看護師は、感染症に対する抗菌薬の種類や投与方法、投与期間などに関する知識はそれほど多くなく、医師からの指示に「なぜ?」と思うことが多いようです。その場合、私自身がまずUpToDateで検索し、時には医師とディスカッションして得た情報をエビデンスとして看護師に説明しています。大事なのは「患者さんにとって何が必要なのか」という目線で、物事を理解していくことです。

Miho Tatematsu, Deputy Chief Nurse and Clinical Nurse, Nagoya Medical Center, National Hospital Organizationある程度の経験年数がある看護師は、医師からの指示に対し疑問を感じることはあります。しかし、看護師の誰かが感じた疑問は、他の看護師にとっても学びを深める良い機会でもありますので「なぜ今、この患者さんにこれが必要なのか」を考えながら実践できる看護師を育成することも、私たちNPの役割です。

独立行政法人 国立病院機構 名古屋医療センター  副看護師長・診療看護師 立松美穂

今後の展望

今後、UpToDateをどのように利用していかれますか?

日常業務の中で感じた疑問を解決することは、看護師教育にも役立っています。そのためには、UpToDateからエビデンスに則った情報を獲得し、自らの知識として蓄えていきたいです。

UpToDateで得られる情報は理路整然としていて、エビデンスとして申し分ありません。英語のコンテンツは看護師にとって敷居が高いと思われがちですが、最初の検索は日本語で入力できますし、ブラウザーの翻訳機能でコンテンツを機械翻訳できますので、何回も繰り返して利用するうちにある程度は読み取れるようになります。経験年数が5~10年以上の看護師、あるいは認定看護師や専門看護師など専門的に学んでいる看護師であれば、少し時間をかけて英語を日本語に翻訳しながら読み取り、内容を理解していくことは可能ではないでしょうか。本人の知識レベルによってエビデンスに対する考え方も情報の理解度も違います。UpToDateをより多くの看護師が利用していくためには、エビデンスの重要性の啓発とともに、看護師が理解しやすい情報も必要かもしれません。

名古屋医療センターについて

名古屋医療センターは1878年に開設された病院を祖とし、37の診療科と656の病床を有し、救命センターや名古屋がんセンターも併設する大病院です。2007年からは愛知県災害拠点病院(地域中核災害医療センター)に指定されるなど、地域医療の中心的存在となっています。

名古屋医療センターでは、2012年よりUpToDateが導入されました。医師の臨床意思決定支援に留まらず、看護師の疑問解決に向けた知識のアップデートツールとしてもUpToDateが活用されています。

  1. 大学院のNP教育課程を修了した現行法上の看護師。米国等では、医師の指示を受けずに一定レベルの診断や治療などを行うことができる「Nurse Practitioner」という看護の資格があります。
  2. 藤田医科大学 岡崎医療センター 総合診療科講師 (2023年11月現在)
  3. UpToDateを施設契約で導入した場合、看護師を含む施設構成員全員がUpToDateを利用可能です。
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