Three students in a lab at Showa University in Japan
ヘルス03 6月, 2023

昭和大学、病院薬剤部と薬学部で医薬品情報リソースを活用し、適切な医薬品情報を医療者と患者に提供

昭和大学は、「至誠一貫」という建学精神のもと設立された医系総合大学であり、人々の健康の回復・維持・増進に貢献すべく、医療に携わる多くの専門家を輩出してきました。昭和大学病院では患者様本位の医療、高度な医療の推進、医療人の育成を目指しています。エビデンスに基づく医薬品情報リソースの活用について、昭和大学病院薬剤部で薬剤の安全な提供に取り組まれている嶋村先生と若林先生、そして昭和大学薬学部で薬剤師の育成に関わる半田先生にお話しを伺いました。

薬剤師の教育から病院薬剤師の業務までを幅広くサポートする医薬品情報

昭和大学では附属病院を含む全学で臨床意思決定支援リソース(CDS) UpToDate®と医薬品情報リソースLexicomp®が導入されています。先生方がこのようなリソースを利用するようになったきっかけを教えてください

嶋村先生:薬剤師として働き始めてからです。学生の頃に医薬品の知識とともに疾患や治療についても学びますが、やはり実務となるとそれだけでは足りません。同じように考える薬剤師は他にもいて、彼らがUpToDateを使用していたので、私も個人として利用し始めました。その後2014年から当院全体でUpToDateとLexicompが利用できるようになり、現在は日常的にLexicompを利用しています。

若林先生:私は昭和大学薬学部を卒業後すぐに当院に入職しましたが、入職当時はまだ利用していませんでした。病院にLexicompが導入された頃から利用するようになり、DI担当となってからは、毎日の医薬品情報業務で必須のツールとなっています。

半田先生:もう15年以上前ですが、当時日本でもDI等に関する講演をされていたアメリカのレイー博士と知り合い、2007年から彼が創設した薬科大学に留学していました。そこではすでにLexicomp onlineが導入されていましたので私も利用するようになりましたが、実はLexicompを開発したのが、レイシー博士たちのグループでした。薬剤師目線で書かれた情報は非常に分かりやすくまとめられ、データの見やすさや検索しやすさなどがとても優れており、周りの学生たちも皆、必要な情報をモバイル端末にダウンロードして、普段の講義や演習、臨床実習等で情報検索を行っていました。

例えば、腎機能が低下している患者にはどれくらいの投与量を設定するか、併用しても良い薬剤は何か、その際の相互作用は何かなどを調べるためにLexicompを利用しました。クリック一つでダイレクトに情報が確認できるので、バイブル的存在でした。

その経験がありましたので、その後日本に戻って2010年に昭和大学に赴任した際に、大学へのLexicomp導入を進めました。

Tomoko Handa世界各国の薬剤師が情報をアップデートしているLexicompは、薬剤師目線で書かれていることがポイントです。患者さんへの説明や院内でのDI提供等、薬剤師にとっての日々の課題解決に無くてはならないツールです。
昭和大学薬学部 臨床薬学講座 がんゲノム医療薬学部門 講師 半田智子

エビデンスに基づく医薬品情報リソースとして利用されるLexicomp

昭和大学薬学部では、多職種からなるチーム医療で思考を共有し、薬剤師としての専門性を発揮し、意思決定のできる薬剤師の育成を目指されています。教育の現場では、Lexicompをどのように利用されていますか?

半田先生:私は薬学部の4年次のカリキュラムで、臨床実習前の医薬情報に関する実習を担当しています。その中で、例えば一つの医薬品についてPMDAの薬剤添付文書とLexicompを比較し、適応や相互作用などについて情報の違いを知ることを体験してもらっています。日本国内での添付文書で示されている適応や相互作用を知ることは必要ですが、海外の情報を扱うLexicompとは内容が違うことも少なくありません。日本で使用できる医薬品は日本での適応があり、諸外国との違いがあるためです。

また、添付文書には書かれていない情報、例えばサプリメントやハーブ類との相互作用、慎重投与となる患者像などをより詳細に検索できるのも、Lexicompを利用するメリットです。同じ医薬品でも諸外国ではどのように扱っているのか、あるいは投与した場合にどのような影響が考えられるかなど、添付文書だけでは分からないこともLexicompから情報収集することができます。

学生への課題は、敢えて日本と海外では適応や相互作用に違いがあるものを選びます。分からない時にLexicompで検索する習慣が4年次までに定着すると、5年次の実習から役立つスキルになると考えています。病棟のカンファレンスに参加する時は薬剤部の代表と多職種から認識されることがありますので、意思決定を行う医師をサポートするために必要な情報は自ら探すという習慣を身に付けてほしいですね。

Hitomi Wakabayashi医薬品は情報が無ければただの化学物質です。情報を付加して医薬品の適正使用を司るのがDI業務ですから、Lexicompのような意思決定支援ツールは欠かせません。医師へ提供する情報は患者さんの状況に応じて変わります。より安全な医薬品投与に向けて複数の情報を集約することでエビデンスとして利用し、正確で根拠のあるDIを捉供することが、私たちの役割です。
昭和大学病院 薬剤部 若林仁美

昭和大学病院薬剤部はチーム医療を中心として質の高い医療を実現し薬剤を安全かつ適切に提供するため、医薬品の適正使用やフォーミュラリーの推進、ポリファーマーの対策などに取り組まれています。病院薬剤師の業務では、どのような時にLexicompを利用されていますか?

嶋村先生:近年は薬剤師も病棟や外来での業務があり、看護師や患者さんに医薬品の説明をするときにもLexicompは役立っています。例えば外来化学療法室の患者さんに、抗がん剤の説明をすることもあります。半田先生がおっしゃる通り日本で使用できる医薬品には日本での適応が海外とは異なる場合がありますが、情報ははっきり示されていればエビデンスとして利用できますので、添付文書に無い情報はLexicompで検索します。

若林先生:私はDIを担当していますので、Lexicompは毎日の業務で利用します。医師や看護師からの問い合わせもありますし、院内でオーダーされる処方箋の情報から注意すべき情報等を拾い上げ、医薬品の用法用量等の詳細な情報を医師へ提案することもあります。

学生の頃、DIに関する講義は無く、医薬品の一次情報は添付文書、二次情報はインタビューフームというのが一般的だと思っていました。でも実際に小児科などの現場に配属されてみるとそれではとても足りない。DI業務の重要性と情報不足を実感していたところ、縁あって自らDIを担当することになりました。

病院全体では、救急や集中治療室、小児や周産期などは問い合わせが多い分野です。日本の添付文書では、小児や妊産婦、授乳婦への投与例が記載されていないものが多いため、Lexicompと別の2つのツールで情報を検索します。例えば小児なら日本で臨床試験を行っていないものは本当に情報が不足していますが、Lexicompで海外の情報を集め、体格の違いなどを参考にして症例報告を出すことがあります。オンラインですぐに検索できるのは、Lexicompの良いところです。

Hiroshi Shimamura国内で使用できる薬剤には日本での適応がありますし、投与盟なども諸外国とは条件が違うことがあります。しかしLexicompには「投与量を決めた条件」も記載されていることが多いため、日本での状況と比較しながら情報提供を行います。特に国内での情報が少ない人工透析や救急医療、小児や周産期などの分野での課題解決に役立っています。
昭和大学病院 薬剤部長 嶋村弘史

嶋村先生:薬剤師も、オンコロジーや感染症など専門化が進んでいます。中でも私は人工透析に関する情報をLexicompで調べることが多いです。例えば、人工透析における医薬品の投与星は日本国内の情報が少なく、持続透析などは本当に少ないのですが、Lexicompにはこうした情報も掲載されています。人工透析そのものが海外とは条件なども違いますが、Lexicompでは「人工透析の条件」まで示されていることが多いので、日本の状況との比較がしやすいのです。

腎機能に障害がある患者さん、人工透析を必要とする患者さんへの医薬品投与は、そのほかの患者さんと同じではありません。また、透析の前後でも腎機能は変化しますので、より安全性を担保するために、同じ医薬品でも用法用豊が変わることや投与回数を調整することがあります。こうした情報をLexicompで検索し、法的根拠や添付文書等には書かれていない情報も調べて提案するということは、薬剤師としての腕の見せ所でもあります。

今後の展望

今後、Lexicompをどのように利用していかれますか?

嶋村先生:Lexicompは日本での情報が少ない部分をカバーしてくれる有用なツールだと思います。院内ではUpToDateも利用できますので、疾患の病態生理や治療はUpToDate、医薬品についてはLexicompという使い分けができると思います。

病院薬剤師は、一次・ニ次情報だけでは足りない情報を医師から相談されることもありますし、医師への疑義照会も行います。日本国内の情報だけでは不足する分野もいろいろありますので、薬剤部のエビデンス源として、今後もLexicompの利用を拡大していきます。

昭和大学について

東京都品川区にある昭和大学は、医学部、歯学部、薬学部、保健医療学部の4学部からなる医系総合大学です。附属の昭和大学病院では38の診療科を標榜し、815の病床数を有します。昭和大学病院では救急医療センターやICU、CCU、HCU、SCUのほか、総合周産期母子医療センター(NICU·MFICU)や緩和ケアセンターなども併設しています。

昭和大学では、エビデンスに基づく臨床・投薬意思決定ツールとして、UpToDateおよびLexicompを大学の教育から附属病院の臨床まで幅広く活用しており、全国屈指の利用率を誇っています。

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ソリューション
Lexicomp
ワークフローや移動中でも使用可能な、エビデンスに基づく医薬品リファレンスソリューション
医療従事者がLexicomp®を選ぶ理由は、スマートで安全な投薬決定をサポートする、エビデンスに基づく医薬品情報リソースだからです。研究では、Lexicompはケアチームにとって好ましい医薬品リファレンスソリューションであることが示されています。
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