今日このシミュレーションには、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、複合現実といった様々な最新テクノロジーが活用されています。
ARは現実世界を、VRはデジタル世界を舞台にしています。この2種類の世界を両方取り入れたものが複合現実で、現実の生活や世界と合成技術およびコンピュータを掛け合わせています。ダラスにあるテキサス大学シミュレーション・合成ヒューマンセンターの教授兼センター長を務めるMarjorie Zielke博士らは、学生が現実世界で対話できるバーチャルヒューマンを作製することにより、医学生向け複合現実プログラムの開発を進めています。
ウォルターズ・クルワー社のヘルス・ラーニング・リサーチ・プラクティス事業部メディシン部門バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーであるVikram Savkarは、Zielke博士とその同僚であるテキサス大学ダラス校シミュレーションおよび合成人間センターの研究者D. J. Zakhidovとともに、ウォルターズ・クルワーのエキスパート・インサイトウェビナーシリーズにおいて、医学教育における複合現実の今後の活用について語りました。
医学教育における複合現実の主な知見
1. 学生は、バーチャルか現実の仲間と一緒に社会的学習を行うべきである
いかなる環境であっても、社会的相互作用は重要です。Zielk博士は、COVID-19パンデミックの間、リモートで研究を行う中でそのことに気付き、学生がお互いに学びあえるように、相互作用の重要性を強調しました。Zielk博士の複合現実プログラムは、社会的感情知能の育成を中心としています。バーチャルの患者に対応する際には、協力してもらう教授や仲間もバーチャルか現実かを学生は選択できます。また、誰からフィードバックを受け取るのかや、希望する学習方式の決め手となる研究対象を選択することも可能です。複合現実のもう1つの知見は、学生が患者や患者家族、仲間とコミュニケーションをとる練習をする機会があることです。Zielk博士のチームの研究により、学生は現実世界での相互作用を試みる前にバーチャル患者と対話することを希望していることがわかりました。
2. バーチャルヒューマンは学生に幅広い体験を提供する-ただし、時間がかかる
Zielke博士らは、医学教育における複合現実の目標として、でき得る限り現実に近づけることを挙げていますが、バーチャルヒューマンと自然に話すことには本質的に無理があります。このチームが生み出したバーチャルヒューマンのキャラクター、ワルターは、自分の症状や状態についてきわめて詳細かつ具体的に説明することができます。それでも学生と自然な会話をすることはできません。ワルターで使用されている最新の自然言語処理は、人間の予測困難性には対応していますが、まだ完全に現実どおりとは言えません。人間の行動を忠実に取り込むには、ダイナミックなキャラクター作りが必要です。つまり、このチームがワルターに対して行ったようにひとつのバックグラウンドに基づいて作製するのではなく、人間の行動に関するデータを用いて、人工知能により作り上げるのです。将来的には、さまざまな文化やライフスタイルに対する学生の理解を助けるような、多様なバーチャルキャラクターが作製されるようになるでしょう。