内部監査部門の成果目標の多くは、一般的な内部監査部門の運用モデルにおける以下の4つの領域をカバーします。:
- ポジション – 内部監査部門がどのように認識されているか。
- プロセス – 戦略を達成するためのテクノロジーを含めて成功するために何を改善する必要があるか。
- 人材– どのような人材が必要か。
- パフォーマンス – 内部監査業務における成功とはどのようなものか(評価基準)。
では、このような部門としての成果とは実際にどのようなものなのでしょうか。内部監査部門の成果目標の実例をご紹介します。これらはすべて、部門全体の活動に焦点を当てて、3~5年間に何が実現できるかを説明しようとしています。
- 内部統制の専門家としてIAの定評のある能力を活用 – 効果的なコントロールと業績へのプラスの影響についてビジネス担当者に主張し教育します。
- データ主導型のインサイト – 最先端のデータ分析や継続的な監査手法の導入時に、あらゆる業務の中心になるのがデータです。対象範囲を拡大し、より深いインサイトを提供し、リスクの早期警告を可能にします。
- 監査人がテクノロジーの可能性を拓く – コアテクノロジーと最新テクノロジーをさらに活用して、より動的なアプローチで業務を遂行します
- コラボレーション、多様性、包括性 – 思想とバックグラウンドの多様性を受け入れます。コラボレーションによって、グローバルチームのあらゆる能力を活用します。
- 監査人エクスペリエンス(AX– 監査人エクスペリエンスは、シンプルかつ明確で、背中を押してくれるものです。優れた人材による優れた業務を実現します。
- 革新の余地を生み出す - 「可能なことを実行する(不可能なことを実現する)技術」に挑み、試行錯誤を繰り返して成功に結び付けます。
順位を付けるとしたらどうなるでしょうか。「ルーフショット」の成果目標の良い例は、AXの成果として監査人エクスペリエンスの向上に注目しているものです。これを重点成果目標として設定した組織は、その手法とテクノロジーに偏り過ぎる傾向があることを発見し、この認識と、戦略的に自分たちが責任をもってあらゆる業務を簡素化し、内部監査業務をもっと楽しめるものにしていこう、ということをチームに示そうとしました。この成果目標が手法を抜本的に見直すきっかけとなり(150ページ以上あったものをわずか15ページに削減)、それに伴い、TeamMate監査システムの実装を簡素化することによって、さらに大きなインパクトが得られました。このすべてが、よりシンプルでより早く、監査人がより使いやすいものへとつながり、生産性と監査人のエンゲージメントが大幅に向上しました。
「ムーンショット」的な観点では、「革新の余地を生み出す」という成果が挙げられます。これは、より先を見越した変革活動に時間と空間を使い、新しいアイデアの試行錯誤が許されるようにすることを意図したものです。内部監査人としての弱点は、失敗する可能性がある新しいことを試みるときにリスクを回避する傾向が比較的強いということで、このために優れたアイデアが受け入れられず機会の損失につながることがあるため、特定された成果目標でした。これを実現するために、変革のヒント集や革新養成プログラムを活用して、チームメンバーを日常業務から解放し、アイデアの開発から製品の設計、テストまで短時間で行うという方法を採用しました。その結果、実施する手法が一晩で大きく変化し、継続的なビジネスモニタリングの実行と、よりアジャイルな働き方の採用に向けた試験的な取り組みの開始につながりました。
このタイプの優れた成果目標を策定するポイントは2つあります。
- 幅広いエンゲージメントを確保する - 戦略のこの側面は、幅広くエンゲージメントを得て策定すれば、成功する可能性が高くなります。内部監査の目的は、通常はリーダーチームが決定しますが、その成果はさまざまなステークホルダーからの重要な意見を取り入れて作成する必要があります。あなたが組織にもたらす価値とは何か、またその価値はどのような形で現れるのでしょうか。CEO、COO、FD、HRディレクターは皆、あなたの部門が彼らにどのような価値を提供できるかについて見解やアイデアを持っています。関与する他の組織からの考え方も持ち合わせている非業務執行取締役の見解も合わせて検討することができます。また、チームメンバーの意見に耳を傾けることも重要です。アイデアやイノベーション、変えるべき分野について、部門内でコミュニケーションが取れていますか。変革内容の決定にチームメンバーを関与させることで、変革が成功する確率が大幅に向上することが明らかになっています。監査の将来像についてチームが期待することは何か、何がその達成にあたって直面する障害や課題だと考えているかを明らかにしましょう。
- 管理可能な成果目標を設定する - 成果目標の数は8~12(前述の内部監査運用モデルの4つの分野、またはそこから派生する分野に沿ったもの)とした方が、20の成果よりも達成できる可能性がはるかに高くなります。内部監査人の業務すべてを制約するのではなく、活動の方向性を示す成果が求められますが、成果目標が多すぎると、無視されたり、へたをすると、細かすぎてエンゲージメントが十分に得られない要因となる可能性もあります。また、成果目標が少なすぎると、3~5年間の戦略期間中に適切な優先順位付けができません。
内部監査部門の戦略策定のこの段階では、部門全体の目線をそろえることができる説得力のある目的と、一連の成果目標を用意します。次に、これらの成果目標と最終的な目的に近づくために、準備すべき実際の変革活動は何かを検討する必要があります。次の記事では、内部監査部門の戦略の特徴3である「すべての活動の照準を戦略的成果の達成に合わせる」について検証します。