four people on station bench
法務財務税務と会計26 7月, 2021

内部監査部門の変革 - 内部監査の目的の策定

この連載記事では、内部監査部門の変革を成功させる方法と、その変革によるその後のビジネスの監査の進め方について検証します。この1年半の間に、取締役会や経営陣が求めるアシュアランスを提供できる監査を実施するために、私たちは何をし、それをどう行うか、監査手法の変革の成功が重要であることを実感してきました。多様なデータ分析、継続的な監査の要素を適用し、他部門と統一の取れたアシュアランスを実現し、アジリティを向上する革新的な機能を監査手法に組み込む必要があります。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、私たちはさまざまな変化を余儀なくされましたが、内部監査部門がこの制約から抜け出すためには、継続的な改善に注力し続けることが重要です。

最高の価値を提供し、コントロールの不備による損害から組織を守る内部監査部門は、段階的かつ根本的な方法で、取り組み方の刷新と適応を続けるところであると考えられます。これは、変化のための変化ではなく、最新の流行やトレンドに乗ることでもありません。自身の役割を明確に認識し、長期的価値の創造と文化の醸成に重点を置くことで、体系的にアイデアを生み出し、変革の原動力となるのが内部監査部門です。

さまざまな内部監査部門と仕事をしてきましたが、大きな成功を収めている部門は、1回限りの変革ではなく、戦略に結びついた継続的な変革に注力しています。変革の基盤を整備し、定着率の高い社内変革を持続できる内部監査部門には以下の4つの特徴があります。

  1. Whatから始める-シンプルでありながらモチベ ー ションにつながる目的主導型の戦略を策定している。/li>
  2. 明確な成果目標を設定し、それを達成するための活動計画を策定する – いつ、何を変更すべきかについて意思決定する際の指針となるフレームワークを策定している
  3. Aすべての活動の照準を戦略的成果の達成に合わせる - 全員がこの戦略に向かって足並みをそろえ、確実に同じ方向に進んでいる。
  4. 継続的な内部監査改善の文化を育むことで、組織として結果を出す - 一歩先へと変革を進める継続的なプロセスを追求し、失敗から学びながら、成果を上げている。

いずれも重要な特徴ですが、4つの特徴すべてを組み合わせることによって、大きな成功を収めることができます。これを正しく理解している内部監査部門は、組織全体(最終的にはその顧客)に高い価値をもたらし、変革の取り組みを通じて高い利益を得て、その利益を将来にわたって持続できます。
これを実現するにはどうすればいいのでしょうか。この連載記事では、上述の特徴を検証し、そこに含まれているアイデアの一部を、多くの内部監査部門が、何が実際に違いをもたらすのか、どのように着手するかを理解しようと模索している特定の領域の変革に適用します。この最初の記事では、1つ目の特徴「Whatから始める-シンプルでありながらモチベーションにつながる目的主導型の戦略を策定している」について検証します。

1. Whatから始める-シンプルでありながらモチベーションにつながる目的主導型の戦略を策定している

内部監査部門の戦略では、内部監査部門の存在理由、その本質的な目的とこれを達成するために実現すべき成果を設定します。これは、何を監査の対象とし、その理由は何か、を示す監査戦略とはまったく別の物です。監査の戦略は何らかの内部監査計画に含まれているでしょう。
戦略は、その複雑さや単調さが原因で失敗することがよくあります。その結果、戦略が内部監査リーダーチーム以外に影響することはなく、あったとしてもほんのわずかです。戦略が複雑すぎると、決め事を守るだけでもすごく時間がかかったり、細かいことにこだわりすぎて重要な前提条件を見失ったり、戦略が中断や方向転換を繰り返したりして、成功に必要な方向性について関係者が混乱することなります。

成功するためには、シンプルでありながらモチベーションが得られる戦略によって、すべての意思決定において方向性を示し、目標に即した活動や、最も必要とされる分野でのパフォーマンスの改善を奨励する必要があります。長期的(通常3~5年)に一貫した明確な戦略を持つ内部監査部門は、変化に迅速に対応し、困難な状況下でも先行投資を継続します。そのため、そのような戦略を持たない内部監査部門と比較して、業務の影響と効率の両方において、同じ期間でより大きな成果を得られる可能性が高くなります。

では、持続性があり、メンバーが関心を持ち、変革を抑制するのではなく加速する内部監査部門の戦略を構築するにはどうすればよいのでしょうか?重要なのは、目的、つまり内部監査部門の存在理由から始めることです。目的は、行動を促し、行動に意味を与えます。これは、コロナ禍とそこからの回復期において多くの人が人生の意味や目標を問いかけてきた中で、かつてないほど重要視されています。そのためには、監査対象のビジネス部門が実際に行っていることとは関係のない、どこにでもあるような善い行いをつらねてしまうリスクを回避する必要があります。単に目的を持つことと、部門を前進させる目的を持つことには大きな違いがあります。チームを前進させる目的とは、次のようになります。

  • 外部に目を向けたものであること。ステークホルダーと築いていきたい独自の関係や、その世界にどのように価値をもたらすつもりなのかを表明します。
  • ひとつ上を目指すものであること。今できることではなく、自分の能力を向上させる将来を見据えたものとします。現在だけでなく将来の内部監査業務のためにも革新が求められます。
  • モチベーションを高めたい人にとって価値と意義があるものであること。内部監査チームの全員に行動を促し、達成するために努力する価値があると信じて内部監査の目的に全力を尽くすよう駆り立てます。

誰もが、自分(そして多くは家族)にとって最善のことを最優先して行動するという利己的な考え方を持っていますが、もし自分の利益が、活動している世界により広範な利益をもたらすことにつながるとしたらどうでしょうか。このような目的の一致は、任意の努力を創造性につなげる強い力があります。また、内部監査では、ビジネスの多くの分野で私たちに優位性が与えられていますが、これは顧客の利益のためにビジネスを前進させる裏付けとなる強力なコントロールを追求し、他者を守ることを目的としているためです。

これは実際にどのようなものなのでしょうか。私が見てきた内部監査の目的の実例をご紹介します。これらはすべて、日常業務に対して、シンプルでありながらモチベーションが得られる理由を提供するという同じ目標を達成するためのものであり、能力を最大限に発揮し、継続的に改善するための革新を求めるものです。

  • ''「優れたインサイトは優れた成果を生む
  • 「コントロールをより早く、より効果的に改善」
  • 「グループの安全性と持続可能性を維持する」
  • 「効果的なコントロールのフレームワークを推進することによって、グループの持続可能な成功に貢献する」

順位を付けるとしたらどうなるでしょうか。私が最も気に入っているのは「優れたインサイトは優れた成果を生む」です。これは、コンプライアンスの検証を中心とした内部監査業務から離れて、より戦略的なインサイト(事業全体のテーマ性を含む)の獲得を実現する、組織と顧客にとってより良い結果につながる内部監査業務にしようとするものでした。「成果」という用語は、組織の戦略的意図の中核をなすものとして幅広く理解されており、内部監査部門もこれに足並みをそろえる必要がありました。この目的は、コンプライアンスの検証のために内部監査部門が存在するのではないことを最初から明確に示していました。チームは、内部監査業務にもたらされた今まで以上の自由を楽しみながら対話と検証を通じてインサイトを深められるようになり、また、純粋に創造的な思考によって、特定された改善が顧客の成果の向上にどのように結びつくかついてビジネス部門に提案するようになるなど、この目的にうまく対応していました。「コントロールをより早く、より効果的に改善」も私は好きです。これは、内部リスクおよび内部統制に関する専門知識の分野においてリーダーの役割を果たせるようになることを目指す、優れた内部監査部門のものでした。効果的なコントロールと、これが内部統制環境にもたらすメリットに関して支持者や教育者として社内のリーダーになることに重点を置いた自己変革への基本姿勢を示すものです。ここでも、従来の内部監査業務を超えて、インサイトを生み出す部門に移行する、このケースでは優れたコントロール環境の力を示す組織の教育者になることを目指しています。これによって、チームは、課題を受動的に特定することが多い状況から、各ビジネス部門において深く持続的なコントロールの改善を推進する方法に積極的に取り組むようになりました。

しかし、適切な目的であっても、チームの日々の行動を形成する明確な成果を実現するきっかけとならなければ、まったく意味がありません。これは、優れた内部監査部門の戦略の2番目の特徴です。部門としての明確な成果とそれをもたらすための行動の設定方法については、次の記事で取り上げます。

Jonathan Chapman
リスクと内部監査の変革を専門とするコンサルタント
ジョナサン・チャプマンは、内部監査の機能戦略とチェンジマネジメントの専門家です。
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