ヘルス02 4月, 2021

名古屋大学医学部附属病院「最新の知見」を エビデンスとする診療で、医療の質を向上

名古屋大学医学部附属病院は、病院内における診療、研修医への指導などでUpToDate®を利用し、医師としての意思決定に役立てています。名古屋大学医学部附属病院への入局前から、10年以上にわたりUpToDateを利用されている総合診療科の近藤医師に、実際の利用シーンや具体的な利用方法を伺いました。

診療科内のカンファレンスにUpToDateを利用

当診療科で1日2回行う入院患者さまのカンファレンスにおいて、UpToDateを利用します。たとえば、特殊な感染症の患者さまに対して一般的に行われる治療内容を検索する、膠原病に対する「ここ最近の治療内容」を検索する、というケースです。医師は各々がもつタブレットやスマートフォンで、カンファレンスの議題について調べ、「こう書かれている」といいながら共有する、という使い方です。

総合診療科は、「一つの領域の知識を詰めていけば日常診療ができる領域ではない」という特徴があります。さらに、当院は地域における最先端の部分を担っており、他院では判断が難しい症例の診断、治療法の検討および方向性の決定という役割があります。常に患者さまの病状に合わせて、その領域の知識を深めて診療を進めることが必要です。手元でいつでも調べることができるツールの存在は重要で、トピックの英文がとても読みやすく理解しやすい文章であるUpToDateは、多くの医師が使いやすいツールといえます。UpToDateのトピックの中でも「最新の診療アップデート(Practice Changing UpDates)」のセクションには、これまでの診療方法を変える可能性のある推奨治療法や最新情報が掲載されていて、非常に役立っています。

研修医のスキルアップにも活用

私は現在、愛知県内の2つの病院で研修指導医も務めており、それぞれの病院で教育カンファレンスを行っています。

カンファレンスの前半は、研修医の先生が提示される症例の診断に対し、私の診断方法や考え方をお伝えし、研修医の先生方の考えなどを引き出す時間です。後半は、特定の疾患に関しての知識を深める時間で、参加されている研修医の先生方と皆で、UpToDateを利用しています。

一つの症例、一つの疾患でも、原因や推奨される治療法など、医師が知るべきことはたくさんあります。たとえば、前半のトピックスとして「診断が難しい脳卒中の症例」が出たとします。後半では、脳卒中の症状や治療法、起こりやすい人物像など、皆が疑問を抱いた症例について各々が分担して調べ、10行程度で説明する簡潔な資料を作ります。それにグラフや画像を用いて皆で共有することで、知識を深めます。医学書に書かれている詳細な知識も必要ですが、UpToDateを利用すると「今の流れ」をより深く理解できます。以前は、こちらでまとめの資料を予め作成しましたが、人は「自分で調べる」という過程を経た方が、記憶に残りやすいようです。

そして何よりも、妥当なエビデンスに基づく情報であるということも、UpToDateの利用につながるポイントです。研修医の先生方は、研修期間が終了するとそれぞれ別の道を進みますが、「特定の病院のリファレンス」だけでは通用しません。汎用性が高く、世界中で利用されている情報を応用する、この能力を育てることも、研修指導医の役割なのです。

近藤 猛 医師 未来の自分のためにも、未来にその患者さまを診療する医師のためにも、『意思決定のエビデンス』を残すことは必須です。私にとってその方法の1つが、UpToDateから得た情報をしっかり残すことなのです。
近藤 猛 医師、総合診療科、名古屋大学医学部附属病院

訪問診療現場からも素早く情報にアクセス

大学の医師は院外でも診療を行うことが多くあります。総合診療科が行う訪問診療の現場でも、UpToDateを利用しています。たとえば、訪問看護師さんから「疥癬の患者さまがいます。どうしたら良いですか?」などの質問を受けた時、現在の皮膚科医が行う「最新の治療法」などをUpToDateで調べることもあります。また、患者さまが自宅で服用する薬剤が比較的珍しい場合や、検査値と薬剤との関係に疑問が生じた時、血糖値が大きく変動したらその原因など、必要に応じてその都度UpToDateで調べる、というシーンはたくさんあります。

訪問診療は診療にかけられる時間が限られていますし、病院外で紙の資料を調べるのも難しい。そうした環境の中でも、UpToDateで最新の知見を素早く調べ、適切な医療の提供につなげていくことは、医療の質の向上につながると考えています。

意思決定の過程をエビデンスに残すということ

医師は毎日、大勢の患者さまの診療を行いますが、その中で「詳細に調べる時間」は取れないことが多い。しかし診断をする時に自らの意思決定において、「使用経験のある薬剤だから」とか、「他の医師の助言に従った」など、あいまいな診療エビデンスしかなければ、不安を感じることもあるでしょう。これは医療の質の低下を招く行為であり、医療の質向上のためには、UpToDateから得た「最新の知見」を明確なエビデンスとすることも必要なのです。

また、電子カルテシステムに患者さまの病歴を残すことは、検査や薬剤処方、治療につながる大事なプロセスです。しかし時間が経つと、過去の判断基準が不明瞭なこともあります。たとえば、数年前から患者さまに使用する薬剤の使用理由や、自分が担当する患者さまが過去に受けた診療内容。これらもエビデンスがしっかり残っていれば分かりますし、過去と今で状況を比較して新たな治療方針を検討することもできます。逆に、自分の残す記録が他の医師の意思決定に関係することもあるのです。

私は、未来の自分のためにも、未来にその患者さまを診療する医師のためにも、電子カルテシステムに「意思決定のエビデンス」を記録に残すことが必須だと考えています。

名古屋大学医学部附属病院について

名古屋大学医学部附属病院は1871年に名古屋藩評定所跡に公立の仮病院として設立されて以来、地域の方々に医療を提供しながら成長を続け、現在では世界レベルの医療を提供する中心となる病院になりました。2019年には日本の国立大学病院で初めて国際的な医療施設評価認証機関であるJCIの認証を取得しました。

名古屋大学医学部附属病院では2009年にウォルターズ・クルワーのクラウド臨床意思決定支援ツール「UpToDate」を導入し、現在も使用しています。

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